2010年12月30日木曜日

アドレナリン2 ハイボルテージ

以前紹介した『アドレナリン』の主人公、登場人物を引き継いだ、純粋な続編。

主人公は引き続きスタイリッシュハゲ、ジェイソン・ステイサム。

前作では、遅効性の毒を打たれてしまい、毒の回りを遅らせるアドレナリンを分泌するためハチャメチャやる主人公『チェリオス』でしたが、今回はそのタフな肉体に目をつけられ、権力者の移植用に心臓をとられてしまいます。とりあえず人工心臓を取り付けられ目を覚ましたチェリオスは、自分の心臓を取り返すため街中を奔走。人工心臓はバッテリーで動いているため、ところどころで充電しながら! バッテリーが切れたら心臓停止→死亡です!

前作では毒の進行を遅らせるため、アドレナリンを出す。というハイテンションを維持しないといけない理由があったのですが、今回は単にバッテリーが切れないようにすればいいだけの話…、なハズなのですが、チェリオスは前作と変わらぬハイテンション! 身体に直に電流を流して充電します!しかも単にバッテリーに充電しているだけなのに、充電直後はパワー全快! ほうれん草を食べたポパイのように強くなります! 充電する→人工心臓の電力確保→心臓がきちんと機能する→とりあえず死なない。だけのハズでは!? その辺『なぜ!?』と思うのですが、そんな細かいことは言いっこなし! チェリオスはもともと凄い奴だったってだけ!

一応でも前作では理由づけとか設定がありましたが、今回はより『そんなこと、別にどうだっていいだろ?お前ら(鑑賞者)だって分かってんだろ』的なノリになってます、『体に電気流したらパワーアップしそうじゃない?』みたいなね。

チェリオスの子供の頃のエピソードが唐突に出てくるのですが、それが何かの複線になるのかな?と思って見てたけど、全然関係ないし、格闘シーンで突然主人公達が気ぐるみになり、怪獣映画風に演出されたり。なんか全然意味不明なんですけど、それが可笑しくて面白い。

ステイサムも相変わらず熱演してますが、チェリオスの恋人『イヴ』を演じるエイミー・スマートにも再注目。前作から可愛らしい女優さんだなと思っていましたが、今作でも体当たりの演技で、そこまでやっちゃって大丈夫?と心配してしまいます。ちょっとぽわっとした性格を演じてるんですが、とても可愛らしくて結構タイプ。『バタフライ・エフェクト』のヒロイン役もこなしてるので、なかなかの役の幅が広い女優さんですね。

『1』以上に「細かいことはウダウダいうな! そんなことは大事じゃない!」的なバカバカしさと勢いを楽しむ映画ですが、見せ方とか演出はちゃんと作ってあるし。素直に1より面白い続編だと思いました。この作品の監督はいい意味でのアホですよ。

大抵の場合、続編で『1』より面白い! と思わせるのはかなり難しいですよね。なんせ期待感がある分、ハードルが最初から高いですから。しかし、今作は期待以上にやってくれた優良続編だと言えます!

どうにもならない問題を抱えて煮詰まった時は、こういう映画でも見るのがいいんじゃないでしょうか。

インセプション

レオナルド・ディカプリオと渡辺謙が競演した、クリストファー・ノーラン監督の話題作。
確か今年の7月末に劇場で見ました。ちょうどついこないだレンタルも開始されたので、2010年も終わりに近づいて来た今、忘れないうちに書いておきます。

クリストファー・ノーラン監督の作品は『メメント』『バットマンビギンズ』『ダークナイト』を観ました。メメントの頃から『完璧に組み上げられている。』というイメージがあり、作品を追うごとにその傾向が強まって、『バットマンビギンズ』『ダークナイト』というアメコミヒーロー作品でも、重厚で、芸術作品のような風格さえ漂わせる作品に仕上げていました。『インセプション』はその極みとでもいいましょうか、『熟成された芳醇なワイン』のような作品でした。(ワイン飲みませんが…)

あらすじ

コブ(レオナルド・ディカプリオ)率いる少数グループは人の夢(潜在意識)に入り込み、アイデア、情報を盗み出す特殊な企業スパイ。ある日、仕事で知り合った大企業のトップ、サイトー(渡辺謙)にライバル会社の社長の息子に、ある『アイデア』を‘植え付ける(インセプション)’仕事を依頼される。他人の潜在意識の奥深くまで入り込みアイデアを植え付ける。それはかなりの危険と困難を伴う仕事だった…。

この映画では『他人の夢に入れる』『1人の夢の世界を、複数人で共有できる』『夢の中でも自らの意思で行動できる』という前提があり、他人の夢(あるいは自分自身の夢)に入り込んで、夢を自分たちの望む形、状況に換えていき、最終的には他人の頭の中の情報、アイデアをゲットするという流れです。

夢は夢なので、通常では起こり得ない突拍子もないことも起きます。その『夢をいかにして操作するか』というプロセスをかなり丁寧に描写しているので、それなりに説得力があり『いやいや、それはないでしょ~?』とならない、上質な嘘にしているのはたいしたものです。

一方で、『他人の夢に入れる』『夢の世界を、複数人で共有できる』『夢の中でも自らの意思で行動できる』を可能としているのは、ある装置のようですが、これには一切と言っていい程触れられていません。レオが自分自身の夢に1人で入っているシーンもあるので、夢に入って行動できるのは彼らが超能力を持っているからとかではなく、間違いなくこの装置が必要なハズです。たぶん微妙なところだったのでしょう。この装置まで説明しだしたら時間がなくなるし、絵的にも全然面白くないし。しかし一言も説明がないのはずいぶん思い切ったなと思います。

先にも書きましたが、ストーリーはもとより、カメラ割り、演出、音楽まで完璧に練り上げられています。

よくDVD化された時にメイキング映像が特典として入っていたりしますが、

レオ「このシーンを撮影していて思ったんだ、こういう風に撮ったらどうか?って。それを監督に相談したら、それはいい!って言ってくれて…。それであのエキサイティングなシーンが完成したんだ」
とかいうことが極めて『なさそう』な監督です。

映像も無茶苦茶綺麗…というか、『美しい』という表現がピッタリ。チープな言い方ですが、天才だと思います、この監督は。

設定上、どうしても話が複雑で理屈っぽくなってくるし、みんながみんな楽しめる作品ではないと思いますが、僕は鑑賞後『いい映画観たなあ』と思いました。2時間30分とやや長めの作品ですが、がっつり向かい合って観て欲しい秀作です。

そういえば、日本ではレオナルド・ディカプリオと渡辺謙のダブル主演!ぐらいの勢いでプロモーションされてましたが、謙さん思ったより活躍は少ないです。