2011年2月22日火曜日

アウトレイジ


前回は青少年の抗争でしたが、今回は大人の抗争。世界の北野武監督作品です。

北野作品の特徴として、『凶暴性』『情緒』『儚さ』などが上げられ、
(コメディー色が強い物もありますが。)今作もいかんなくその持ち味は発揮されています。

僕はどちらかというと、『Dolls』等の芸術性を押し出した作品よりも、彼お得意の『やくざ』を扱った作品を好んで観ます。自分でも不思議なんですが、アウトローへの憧れに近い感情は誰にでもあるのではないでしょうか。

例によって、ストーリーはただひたすらに破滅に向かって突き進みます。
似たような話の『BROTHER』では山本(武)率いる組がアメリカでのし上がり、そして破滅する様が描かれていますが、今作では主人公『大友(武)』が率いる大友組は、組織(大友組は山王会池元組傘下)のために忠実に命令をこなすも、彼らを利用し自らの利益を拡大しようとする組織上層部の目論見により、図らずも破滅の道を突き進むことになります。

その過程が、ただただ淡々と描かれます。

禁欲的といっていいぐらい要素がそぎ落とされていて、音楽でさえほとんど挿入されません。たま~に音楽が入るのですが、それがまた往年のゲーム機 セガのメガドライブの音源で作ったかのような、80年代を想像させる音質で得体のしれない恐ろしさを上手い具合に出してます。

北野映画の凶暴さって『いきなり』なんですよね。今までニコニコ会話してたと思ったら、突然キレて殴りかかる。『こいつ、なにするか分からんぞ』的な怖さ。残酷なシーンも多いのですが、そこに過剰な演出を入れたりせず特別扱いしない。淡々と進めることによって、そういう暴力は普通に行われていることだ。と感じさせる。それが余計に怖い。

主人公の大友はバリバリの武闘派で凶暴な男です。でも根っからの悪人ではなく、部下思いでもあり、昔ながらの任侠やくざで、結局は他に喰われる役であることも影響しているのかもしれませんが、武自身の殺気は依然より落ちているような気がしました。やっぱり年とって丸くなってきちゃったのでしょうか? 

おっさんたちが『バカヤローコノヤロー』言って争う中、唯一花があるのが椎名桔平演じる水野。大友を慕う武闘派幹部役でかっこよかったです。加瀬亮も役割的にはおいしいはずなのですが、ちょっとパンチが弱かったですね。

登場人物たちが、あまりに『バカヤローコノヤロー』を連呼するので、『なんだよ、もうちょっと他に脅し文句があるんじゃないの?』と、途中笑ってしまうようなこともありましたが、見終わった後には、寂しさ、虚無感に包まれます。

これこそホントのキタノブルーなんじゃない?

すべての事柄に意味などない。ただ過ぎ去るだけ。

ニヒリズムが溢れまくっていますので、明日への希望が見えない方や、これからがんばろうと決意を新たにしている方にはお勧めしません。
今やそこらかしこで使われすぎて、安くなってしまった『SAMURAI』に憤る、散り際こそ肝心。と滅びの美学を追う真の侍スピリッツをお持ちの方や、たまには破滅的な気分になりたいじゃん。と心にゆとりのある人にお勧めです。
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2011年2月13日日曜日

なぜか今 疾風伝説 特攻の拓

『疾風伝説 特攻の拓』は1991年から1997年まで、『週刊少年マガジン』(講談社)にて連載された漫画です。(ウィキペディア調べ)

疾風伝説 特攻の拓と書いて『かぜでんせつ ぶっこみのたく』と読ませます。

会社の後輩が、この漫画について書いてくれ。というのです。なんでもこの作品のスピンオフ作品が2011年に連載スタート予定であり、さらに先日放送されたアメトークの企画プレゼンにてコンビ芸人、ハライチが『特攻の拓』芸人を提案したとかで、今またこの漫画が熱い!とファンである彼は熱くなっているのです。 なので、連載当時の記憶を辿りこの漫画の魅力を伝えたいと思います。

この漫画はヤンキー抗争もの。

主人公、普通の高校生『拓』がヤンキーたちの諍いに巻き込まれながらも成長していくお話。
この漫画の見所は、たくさんの族とそれを形成している個性的なキャラクターの争いです。
いったいどれだけ出てくるんだよ?ってくらい数多く登場する族(チーム)。
各族たちは恐ろしいほど仲が悪く、見つけたら『全殺し』、出会ったら『鏖(みなごろし)』という一触即発、物騒極まりない関係で、至るところで抗争が勃発しまくります。このバイオレンスシティでは『ビビッたら負け』いつでもつっぱり根性見せて喧嘩上等!なのです。

さらに特筆すべきはチームを率いる各総長達。
彼らはさすがチームの頭だけあって喧嘩が無茶苦茶に強い! ベラボーに強い! もはや怪物です! ドラクエでいうと彼らはレベル99にまで達した最高クラスの強さ。もちろん副総長とかも十分に強いのですが、総じて彼らはレベル40ぐらいで、それ以下の雑魚クラスには余裕で勝てますが、総長クラスと対峙したらボッコボコにされます。

この漫画には明確なヒエラルキーが存在し
・総長
・副総長
・ちょっと強い奴
・普通の奴
・主人公 拓
となります。総長、副総長クラスにはそれ以下がどんなに群れてかかってもかなわない、階級が違えば、ワンパン(パンチ一発)で沈められることが大抵です。

じゃあ、頂点にいる総長同士が戦ったら…そこが一番胸躍る部分なのですが、彼らは同じレベル99。戦っても決着はいつもうやむやに。アホみたいに強いやつらがばんばん出てくるのに、彼らの力は拮抗(一部例外あり)していて、絶対に決着しないというのがこの漫画の特徴です。主人公、拓 と親しい『爆音小僧』の頭『マー坊君』ももちろんこのランク。少年漫画では強い敵に打ち勝って成長するというセオリーがありますが、この作品では一切当てはまりません。彼らの『強さ』というステータスはこれ以上成長しないのです!もうレベル99だからね。最初から最後までみんな引き分け。 

逆に言えば、連載初期に登場したキャラが後半より登場するキャラクターの強さ表現のため、噛ませ犬化されることがない(ランク=総長だけは)ため、安心してお気に入りのキャラを見守る事ができますよ。

描かれるのは 主人公 拓を中心に築かれる人間関係と、拓の精神的成長のみです。もっとも、総長レベルとは比べるべくもありませんが、いじめられっ子だった拓ちゃんが多少喧嘩慣れしてちょっぴり強くなる姿は描かれています。

約7年に渡って連載されたにも関わらず、打ち切りのような形で終了してしまったため(原作者と作画者の不仲が原因と言われています。)イマイチ何がしたかったのかよくわからなかった漫画です。前述の通り、単に強さ比べの内容でもないし。決していい終わり方ではなかったと今でも思いますが、

ありあまる青春のエネルギーをぶつける先を求め、争い、あるいは二輪車でのスピードを追求し、刹那の輝きを放つティーンエイジャー達が明確な目標や終着点などを考えてもいるはずもない…。と超好意的な解釈をすれば、こんな終わり方もありといえばありなのか。

イマイチ魅力を伝えられたか微妙なとこですが、僕は結構好きな漫画でしたよ。

暴走する若者の輝きとモンスター達の圧巻バトル! さらには原作者のこだわり、バイクとエフェクターの凝りすぎなマニアック設定、専門用語の連発! 迷セリフも連発!

単行本、全27巻! 今こそ大人買いして一読を! そして感想を教えて欲しいもんです。